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”研究で一番大事な事は工夫すること”

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四択問題を考える

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試験シーズンです。

担当の科目(微生物関連)で「学年末試験は四択問題×50問。一問2点だよ!」と宣言しました。

言い方は悪いですが、体系的というよりは、雑学的な科目で、広く浅くという性格が強い科目。

語句を答えるくらいきっちり覚えるよりは、沢山の問題を出したほうが良いと考えたためです。

「四択」に統一する必要はなかったのですが….

 

 センター試験、英検、TOEIC

受験者が最も多いであろう、この3つの試験で四択問題が採用されています。

国公立大学の合否がセンター試験で決まり、高校推薦入試では英検が、企業ではTOEICが決め手となることがあります。

それから、クイズ・ミリオネラも四択でした。

日本人の人生は四択によって決まると言っても過言ではないでしょう。 

 

 

記述式と客観式

筆記試験には「記述式」と「客観式」があります。

記述式とは言葉で答える形式。たとえば、

鎌倉幕府を開いたのは誰か?という問題に対して、

源頼朝」を正解にする。

客観式は用意された答えから選ぶという形式。たとえば、

鎌倉幕府を開いた人物を次から選べ。

1. 徳川家康 2.源頼朝 3. 足利尊氏 4. 織田信長

 

出題・採点者側からみると、

記述式は、完全に覚えているのかどうかを見ることができますが、

「源さん」とか「武士」とか答えてはいけないようにしなくはいけませんし、誤字の許容や中間点の設定もしなくてはいけません。特に文章を書かせる論述式では、根本的に採点も主観的になります。

 

客観式は、完全に覚えていなくても正解にただりつけますので、

その分、より高度な問いを作ることができます。

採点者の意図しない答えはありません。

採点の容易さ以外にも、この客観性と高度性という点が、入試や各種の資格試験で客観式が用いられている理由だと考えます。

 

一方、出題者からすると客観式には大きなデメリットがあります。

それは、問題作成が大変なことです。

上の例では 1. 徳川家康 3. 足利尊氏 4. 織田信長 という3つの誤答を考えなくてはいけません。

1. フランシスコ=ザビエル 2. 卑弥呼 3. ガンジー とかにしてはいけません(わからなくても答えられてしまうから)

 

微生物の50問を作るのに12時間かかりました。

期末試験で客観式を作る教員が少ない理由です。

 

四択問題の構造

学問をすごく単純化して考えると、

AはBである

ということだと思います。

 

回っているのは地球である。

とか。

 

客観式試験では

AはBである

が○か×かという問題が作れます。

○×問題ですね。

(余談ですが、英語では○×問題はTrue or FalseでTF問題になります。ぱっと見でわかりにくいなあ)

 

四択問題は、4つの○×問題の集まりだといえます。

鎌倉幕府を開いた人物は徳川家康である。= ×

鎌倉幕府を開いた人物は足利尊氏である。= ×

鎌倉幕府を開いた人物は源頼朝である。= ○ 

鎌倉幕府を開いた人物は織田信長である。= ×

 

 

受験者には真である選択肢はもちろん、偽である残り3つの選択肢がわかるかどうかが問われますし、

出題者は真である選択肢はもちろん、偽である残り3つの選択肢も同様に慎重に作問しなくてはいけません。

 

四択問題には「正しいものを選べ」という設問もあります。

正しいものを選べ。

1. 室町幕府を開いた人物は徳川家康である。

2. 江戸幕府を開いた人物は足利尊氏である。

3. 鎌倉幕府を開いた人物は源頼朝である。

4. 江戸幕府を開いた人物は織田信長である。

 

この問題は4つの○×問題の集まりだということがはっきりわかります。

1. AはBである。

2. CはDである。

3. EはFである。

4. GはHである。

 

つまり四択問題は独立した、あるいは関連した4つの事項の知識について問うことができます。

 

逆に「誤っているものを選べ」という設問もあります。

誤っているものを選べ 

1. 江戸幕府を開いた人物は徳川家康である。

2. 室町幕府を開いた人物は足利尊氏である。

3. 鎌倉幕府を開いた人物は源頼朝である。

4. 室町幕府を開いた人物は織田信長である。 

 

(幕府が3つしかないので、うまく作れませんでした。)

 

四択問題は記述式に較べて、最大4倍量の問題を作ることができるということです。

出題範囲の広い試験と相性が良いということがいえます。

 

 

正誤問題は意外と作りにくくて、

鎌倉幕府を開いた人物は源頼朝である」と書いても、

出題者が思ってもいなかった色んな解釈(いちゃもん)が出てくるということがあります。

 

「最も適当なものを選べ」という言い方をするのはそのためです。

最も適当って...

 

それでも、こういうことがあります。

九大入試で出題ミス 英語と化学:朝日新聞デジタル

九大入試で出題ミス 英語と化学 

九州大は3日、一般入試(前期日程)の2月25日の英語と26日の化学で出題ミスがあったと発表した。どちらも受験生全員を正解扱いにするという。

 英語は第2問の問4。問題文の下線をつけた言葉が表すものに最も近いものを文中の四つの選択肢から選ばせる問題で、正解に想定していたもの以外にも二つが正解と考えられることがわかった。

 

最も近いものが3つ??? 

 

 なぜ4?

ところで、なぜ三択や五択ではなく四択なのでしょうか?

 

偶然当たる確率は三択で33%、四択で25%、五択で20%です。

四択から五択に増やせば偶然に当たる確率は5%下がりますが、五択問題はめったにみられません。

 

三択

1. 徳川家康 2.源頼朝 3.足利尊氏

五択

1. 徳川家康 2.源頼朝 3.足利尊氏 4. 織田信長 5. 北条実時

 

違和感を感じませんか?

三択、五択は真ん中ができます。三択の2.源頼朝、五択の3.足利尊氏が偉くて、他はその家来みたいに見えなくもありません。五択では1番と5番もより目立つように感じます。

 

四択は公平に見えます。

1. 徳川家康 2.源頼朝 3.足利尊氏 4. 織田信長

 

また、4= 2 x 2と因数分解できます。

二択 X 二択 の組み合わせ問題が作れます。

 

センター試験の社会では多い形式です。

幕府とそれを開いた人物の組み合わせとして正しいものを選べ。

1. 鎌倉幕府足利尊氏 江戸幕府徳川家康

2.鎌倉幕府足利尊氏 江戸幕府織田信長

3.鎌倉幕府源頼朝 江戸幕府徳川家康

4.鎌倉幕府源頼朝 江戸幕府織田信長

 

 四択問題の問題点

四択問題の欠点は偶然合う確率が高く、真の正解率と得点は必ずしも比例しないこと。

その中で学力が得点に反映されるようにできる限りの工夫をするわけです。

 

「勘ではわからないようにする」ために3つの不正解を考える訳ですが、

時にはそれが行きすぎることも。

センター試験の平均点が結構、変動するのもこのへんに理由があるのではと思います。

 

ICT教育と四択問題

さて、四択問題(三択でも五択でも)はデジタルと相性が良いという利点があります。

たとえば、単語帳アプリFlashcards Deluxeは自分で問題を作ることができますが、択一問題は自動で作ることもできます。

統計的に分析したり、間違った問題を繰り返し解くということも容易にできます。

 

ICT教育が教育現場に当たり前になるのもあと数年だと思います。

コンピュータの技術も大事ですが、そのコンテンツに関する方法論的な事も大事ではないかと、

四択問題を50問も使って感じました。