実験ノートに書いていないことはやっていないと見なす
新学期が開始し、卒業研究も始まりました。
最初は実験技術の習得が目標となるわけですが、今年の学生は「実験ノート」の書き方をやけに気にします。
感心、感心....って....そうか、ニュースを見てるからか....
当研究室の研究室マニュアルはこのようになっています。
実験ノート
・当研究室ではコクヨリサーチラボノートB5を用いる。
・実験ノートは実験をした証拠物品である。
・ボールペンを使用しなくてはいけない。
・1ページから順に使っていく。
・原則的に実験室外持ち出し禁止である。
・実験をするときは常に傍らに置き、実験に関することは漏らさず、詳細に記載する。
・5mm方眼である。細字のボールペンを用いて、方眼に沿って字を綺麗に書くこと(小さな字が書けない人は訓練をすること)
・方眼を利用して、スケッチ、表、グラフを作成すること。
・電気泳動などの写真(ファイル名を記録しておく)もプリントアウトして貼り付けておくこと。
・実験が終わったら、指導教員に実験ノートを見せ、サインを貰うこと。
「漏らさず、何でも書く。」という事は最重要事項です。
「実験ノートに書いてないことは、やってないと見なす」と学生に告げます。
実験ノートを見ながら、質問します。大抵、最も重要な事、知りたいことが書いてありません。「これはどうなった?」と聞くと、学生は「○○でした」と答えます。まず、その場でその答えをノートに書き込ませます。
生物実験は細かくて、ステップが多くてしんどいと思います。
実験記録をこまめに取っていくと、その実験時間がさらに長くなります。
5分間の待ち時間も休憩できなくなります。
でも、決して実験ノート作りをさぼってはいけません。
証拠というよりも、自分のためです。
昨日やった実験の方法、試料の保管場所さえも忘れます。
明日の自分のためにメモを残す、というのが実験ノートの一番の目的だと思います。
卒研学生が居ない年は授業や校務の傍ら、自分で実験をしましたが、一年で10冊の実験ノートを消費しました。それでも論文1本になるかどうかのデータ量に過ぎません。
なので、論文に間違いがあって、実験ノートに証拠が見いだされないというのは、不正がなかったとしても、思い違いがあった可能性を否定できないと思います。
何はともあれ、今回の事件は学生に実験ノートの大事さを認識させてくれましたし、僕に実験ノートの指導の大事さも認識させてくれました。
もっと詳細なマニュアルを作らないとなあと思ったら、すばらしいブログ記事を見つけました。野島高彦さんの
実験ノートには何を記録するのか? - 大学1年生の化学(北里大学・野島高彦)
きれいな図解入りで、たいへんわかりやすいので、これをプリントアウトすることにしました。
何だか、野島さん、実験ノート絡みで有名になってるようです(笑)。