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”研究で一番大事な事は工夫すること”

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地方球場にはあって、甲子園球場には無いもの

ゴールデンウィークに入ると、当地、東北では野球の大会真っ盛りとなり、今日も小学生、中学生、高校生の春の地区大会が市内各地の球場で行われました。

 
休日ですが、野球部顧問の僕は平日よりも早起きし、夕方までバックネット裏の本部席に缶詰めでした。
 
記録員として1試合スコアを付けたのですが、試合後に議論になったのが、「フィルダースチョイスの記録の付け方」です。
 
まず、フィルダースチョイス(英語でFielder’s choice、日本語で野手選択)とは何か?広い意味もあるのですが、ここでは狭い意味でのフィルダースチョイスについて説明します。
 
走者が一人以上居るとき、打者が打球(大抵はゴロ)を打ち、それを捕った守備者が、送球すればアウトになる塁もあるのに、アウトにならない塁へ送球したため、アウトを取ることができなかった、というような状況をフィルダースチョイスと言います。
 
よくあるのが、スクイズバント(走者三塁でのバント)を捕った選手がバックホームをしてセーフになるケースです。一塁に投げれば打者走者はアウトになるのに、点数を与えないため、本塁でのプレーを選択したわけです。
スクイズバントでなくても、無死または一死三塁で内野ゴロでバックホームがセーフとなるケースも多いです。
一死一塁でヒットエンドラン(走者がスタートして打者が打つ)がかかっていて、サードゴロが飛んだとき、サードがダブルプレーを捕ろうと二塁に送球したが、セーフとなってしまったというケースもたまにあります。
 
このように、一塁より二塁、二塁より三塁、三塁より本塁、より重要な本塁に近い塁でアウトを取るため、フィルダースチョイスが起こります。
 
野球場のスコアボードには、SBO(最近ではBSO)の表示の隣に、よくHEFcの表示があります。

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打者が打ち、アウトが取られなかったプレーがあった時、それがヒットなのか、エラーなのか、フィルダースチョイスなのかを表示して、観客および両チームのスコアラーに知らせる役目があります。
 
その判定は記録員の仕事です。
ヒットかエラーかの判定はとても難しいですし、たとえばノーヒットノーランなど野球の記録として注目される要素で、記録員としては一番気が重い任務です。
一方で、フィルダースチョイスは、傍から見ていると予測可能ですし、「誰の責任でもないよ」という判定なので、だいぶ楽ではあります。
 
ゴロをちょっとファンブルして、送球がちょっと逸れて、捕球がちょっとまずくて落としてしまって、セーフになったような場合など、一塁でのプレーなら、ヒットかエラーか、エラーなら誰のエラーか、瞬時に判定するのは難しいですが、本塁でのプレーなら、「そんなギリギリのプレーをしなくても、一塁なら余裕でアウトだったよね」でフィルダースチョイスにするという手があります。
 
つまり、フィルダースチョイスはそのプレーへの判定ではなく、行われなかったプレーへの判定であると言えます。
 
さて、本題です。
当地の高校野球ではフィルダースチョイスは次のように記入します。
 

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状況:
一番打者①が二塁打を打ち、無死一塁となった。
二番打者②がショートゴロを放った。ショートは三塁へ進もうとする走者を見て、三塁へ送球したが、間に合わずセーフとなった。
打者は凡打を打ったのにも関わらず、誰もアウトにならず、無死一三塁となった。これはショートのフィルダースチョイスと判定した。
 

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一番打者の三塁への進塁欄に、二番打者の打撃結果である(二)と記し、二番打者の一塁への進塁欄に、ショート(6)のフィルダースチョイス(FC)であることを記します。
 
これ以外の書き方は無いだろうと思っていました。
ところが、「日本野球連盟」の記録の付け方の本では次のようになっていることがわかりました。
 

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こちらにも一理あるという意見がありました。
この方法の良いところは、「ショートが間に合わないサードに投げた」という実際のプレーが記録されるところが良いのではということです。
たとえば、さらにその送球をサードが逸らして走者が進塁するなど、プレーが続行した場合、対応しやすいという意見です。
 
また、打者の一塁欄は6-というように、ショートからの送球の相手が書かれていませんが、それだけで、打者走者はアウトになっていないということがわかります。
たとえば、走者一塁でショートゴロ。ショートが二塁に送り、一塁走者がアウトというプレーは下のように記録されます。

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また、この場合、一塁走者がアウトになったのは誰の打撃結果であるかは書かれていません。
 
同じ状況で、二塁がセーフなら、下のようにするという考えではないか?

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一方、打者欄に書く方の利点としては、進塁に関する打者の功績が明確であるという事です。下の例は三塁ランナーがショートゴロにより生還したケースであり、二番打者の打点である丸二が示されます。

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熱い議論が続きましたが、結論としては、
「野手選択って記録としてはどうでも良いのではないか?」
という事になりました。
 
アウトであってもセーフであっても、記録上は凡打に過ぎず、打者の打率は下がります。守備に失策も付きません
 
フィルダーズチョイスというのは「今のはヒットでもエラーでもありませんよ。」という状況の説明のための用語であるということです。
 
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↑ HEFc表示って地方球場には必ずありますが、実は甲子園にも東京ドームにも神宮球場にも無いんですよねえ。その理由はフィルダーズチョイスが記録に残らない記録であるからではないかと考えています。